ルカ2:8~20
イエス・キリストがお生まれになったクリスマスの知らせを最初に聞いたのは、羊飼いたちでした。どうして他の誰かではなくって、羊飼いたちだったのでしょうか。それは羊飼いがあらゆる人々の中で最も低き人たちであったからです。もう羊飼い以下の人はいなかったのです。その羊飼いたちに最初にクリスマスの知らせが届いたということは、クリスマスと無関係な人間は一人もいないということです。小さな赤ちやんや皆さんのような子ども、それから大人たちばかりではありません。今病気で苦しんでいる人々や苦しみや悲しみの中にある人、戦争や災害の真っ只中にいる人々、恐れや不安の中にいる人、ひとりぼっちの人、全ての人々にクリスマスがやって来るのです。ですから羊飼いたちというのは、私たちの代表です。
その羊飼いたちに主の天使は何と言ったでしょう。10節以下をもう一度読んでみましょう。「今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった」。天使は救い主が今日お生まれになったことを知らせたのですが、その救い主というのは、あなたがたのためであると言いました。天使は「あなたがた」と3回線り返していますが、このあなたがたというのは羊飼いたちのことです。おそらく何人か羊飼いたちがこのときいたのでしょう。ですけれども、羊飼いというのはこれは私たちの代表だと言いましたね。そしてこの「あなたがた」というのはもう少し丁寧に言うと、「あなた」という意味です。天使は、あなたのために今日、救い主がダビデの町にお生まれになられたと言っているのです。あなたとは誰のことでしょうか。それは今日、こうしてクリスマスを迎えた私たち一人一人です。今日、あなたのために救い主がお生まれになった。そのお方こそ、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子である。「これがあなたがたへのしるしである」。聖書を通して神さまは私たちにそう伝えているのです。この乳飲み子、赤ちゃんが誰であるか、皆さんもう分かっていると思います。イエスさまのことですが、赤ちゃんは本当に小さいですね。守ってもらわないと生きていけません。すやすやと眠っている赤ちやんは可愛いですけれど、無力ですね。何も出来ません。そんな赤ちやんのイエスさまがどうして人を救う救い主であるというのでしょうか。天使はこう言いました。「これがあなたがたへのしるしである」。乳飲み子のお姿でお生まれになったイエスさまは「しるし」だと言うのです。どういうしるしであるかというと、神さまが私たちを救うために今日、私たちの所に本当に来て下さった。私たちを救うためにすぐ近くにお出でになられたそのしるしなんです。それが本当である。事実であることを私たちに知らせて下さる。はっきりと見ることの出来るしるしこそ、クリスマスに赤ちゃんのお姿でお生まれになられたイエスさまだと聖書は教えているのですね。
そして、しるしであるイエスさまによって、神さまはどのような救いを私たちに約束しておられるかというと、13節以下です。「すると、突然、この天使に天の大軍が加わり、神を賛美して言った。『いと高きところに栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ』」。これは神さまがおられる天と私たち人間が生きるこの地上が一つになった。繋がったということです。私たちが生きるこの地上の生活にはたくさんの苦しみや悲しみ、問題や課題があります。嫌なこともあるでしょう。どうすればいいか考えても分からない難しいこともあります。戦争があります、人と人とが対立し、争い、敵対することがあるんです。病気になることも失敗することも、行き詰まる事も一杯あります。でも天と地が繋がったということは、苦しみの時も悲しむときも、病むときも、失敗するときもいつでもどのようなときも神さまが私たちと必ず一緒におられるということです。苦しいことは苦しいんです。悲しいときは悲しいのです。病気になることは嫌ですし、痛いですし辛いのです。でもその時も神さまは一緒にいてその苦しみを共に苦しみ、悲しんで下さって一緒に歩んで下さるですから苦しみや悲しみは決して無意味ではないのです。神さまが共におられることを知り、そして神さまが必ず必要な力と勇気と希望を与えて下さる。これが救いです。神さまが最後まで私たちを生かし、共に歩んで下さり導いて下さる。このように天と地が一つになる、繋がったということはこの地上に生きる全ての人々を救う真の希望なんです。この希望こそ、クリスマスに乳飲み子のお姿でお生まれになったイエスさまなんです。イエスさまはやがて成長し、私たちがこの地上で経験するありとあらゆる苦しみや悲しみ、飢え乾き、全部を知られたのです。そして最後はあの十字架に礫にされて死なれました。神さまが共におられることを忘れ、神さまから離れていこうとする私たち罪人を赦し、救うために神さまは大切な独り子であるイエスさまを世にお与えになって、あの十字架につけて救いを成し遂げて下さることを、このクリスマスに約束されたのです。羊飼いたちは「さあ、べツレヘムへ行こう。主が知らせてくださったその出来事を見ようではないか」そう言って出かけて行きました。そして乳飲み子のイエスさまにお会いすることが出来たのです。そうして羊飼いたちはどうしたでしょうか。「神をあがめ、賛美しながら帰って行った」と書いてあります。寒い草原で来る日も来る日も羊の番をして地面に這いつくばって生きていかなければならない、大変苦しい、辛いその生活に帰って行ったのです。でもその厳しい生活の中に神さまが共におられるという約束を信じて喜んで希望を持って生きる力を、彼らはクリスマスにイエスさまから頂くことが出来たのです。だから彼らほ「神をあがめ、賛美しながら」喜んで帰って行ったのです。
今日、あなたのために救い主がお生まれになられました。神さまはイエスさまを一人ひとりにお与えになられたのです。イエスさまをお与えになられた天の父なる神さまが新しい年も皆さんと共に歩んでくださいます。その神さまをあがめ、賛美を捧げてクリスマスを喜びお祝いしたいと思います。