ヨセフ物語1

創世記37章23~36節

 ヨセフには兄が十人、弟が一人いました。ヨセフと弟ペニアミンは父親が年をとってさずかった子どもなので、特に大切に育てられました。父ヤコブはヨセフを可愛がり、裾の長い晴れ着を買って着せました。「ヨセフだけえこひいきされている」と、ねたむ気持ちが湧き上がっていました。
 ある日、ヨセフは夢を見ました。畑で、自分の結んだ麦の束が立ち上がり、その周りに、兄たちが結んだ束がひれ伏した、という夢です。夢の内容を兄たちに話しました。太陽と月と11の星がヨセフにひれ伏す夢を見たことも、兄たちに伝えました。
 両親から愛されて育ったヨセフは、無邪気です。夢の話をしたら、見たちがどんな気持ちになるか、予想できなかったのでしょう。無防備でした。兄たちのヨセフに対する妬み心は膨れ上がり、破裂寸前です。
 ある日、十人の兄は、羊たちを連れて出かけました。ヨセフは家に残っていましたが、父親にお使いを頼まれ、兄たちのところへ行くことになりました。「行ってきます」お気に入りの服を着て、元気に家を出たヨセフは長い道のりを進んでいました。すると兄たちがヨセフを見つけました。「ヨセフが来たぞ。ちょうどいい。」兄たちはヨセフを殺してしまおう、と相談しました。
 一番上の兄ルペンは「命までとるのはよそう。この穴に投げ入れよう。」と言ったのでヨセフを穴に落とすことにしました。
 「兄さ~ん。」にこにこしながら近づいたヨセフをつかまえ、裾の長い晴れ着をはぎ取り、穴に投げ込んだのです。穴に落ちたヨセフはびっくりして「兄さん、ここから出してください。」一生懸命叫びました。兄たちは穴から引っ張り出して、どこかへ連れて行ったのでした。
 兄たちはうろたえました。父さんに何て言えばいいのだろう。そうだ、獣に襲われたことにしよう。ヨセフのこの上着に血をつけて、持ち帰ろう。相談がまとまりました。父親のヤコブは息子たちの嘘を信じ、「ヨセフが死んでしまった。」と嘆き悲しみヤコブは毎日毎日泣いていました。
 平和な家庭はくずれました。17才で家族から引き離され、遠い地へ連れて行かれたたヨセフはどれほど心細く、悲しく辛かったことでしょう。ヨセフを失った家庭から笑い声が聞かれることはありませんでした。ヨセフが死んだというのがウソだと父に打ち明けることもできない長男ルペンは、ヨセフを心配しながら、苦しんでいました。

 この悲劇の中に神さまから救いの光が与えられています。ヨセフが落とされた穴には水がなかったこと。ヨセフを穴から引き上げた商人がいたこと。連れていかれた先でヨセフはエジプトの宮廷の役人に仕えたこと です。 
突き落とされた穴の底から、「助けてください。」と叫ぶしかない、人生のどん底を味わった少年ヨセフは、その後、数えきれない苦労をします。ヨセフの波乱万丈の半生には神さまが共にいて、試練や困難を乗り越えることができるよう守り、導いておられました。神さまは私たちが苦しんでいるとき、近くにいてくださり、やがて、身に降りかかる苦難の言いを知る時を備えてくださいます。