羊飼いたちの礼拝

 ルカによる福音書2章8~20節

 ベツレヘムの馬小屋でイエスさまがひっそりとお生まれになりました。それが救い主のお誕生であることをまだ誰も知らされていませんでした。その夜のことです。近くの荒れ野で羊飼いたちが羊の番をして野宿をしていました。
 イエスさまがお生まれになったこの時代、羊飼いたちは人々からのけ者にされ虐げられていました。羊飼いのお仕事は預かった羊の世話です。生き物の世話をするのは大変です。たくさんの羊たちにえさを与えたり羊たちの糞や尿の掃除をしたりする、臭くて汚い仕事です。夜は羊が狼に襲われたり誰かに盗まれたりしないよう守らなくてはなりません。きつくて危険な仕事です。しかも何か起こって病気や事故で羊を死なせてしまったら賠償金を払わなくてはならず、そうなるとお手当ももちろんもらえませんでした。立場の弱い貧しい羊飼いだったのです。24時間ずっと羊に付いて世話をするので、安息日も守れませんでした。ですから人々からは羊飼いは律法を守らない、神さまから遠く離れた罪人だという扱いをされ、あまりよく思われていませんでした。
 さて、羊飼いたちがその夜、羊の群れを守りながら、たき火を囲んで座っていたときのことです。
 突然、光が差し込み、天使が現れました。羊飼いたちは恐れて地面にひれ伏しました。まさかのけ者にされているような自分たちに神さまが天使をお遣わしになるなんてと驚いたのです。しかし神さまはそんな惨めな羊飼いをお忘れになってはいません。天使は言いました。
「こわがることはありません。わたしは民全体にあたえられる大きな喜びをお知らせします。今日、ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになりました。このかたこそ長い間待っていた救い主です。あなたがたは、布にくるまれて飼葉桶で寝ている赤ちゃんを見つけるでしょう。それがあなたがたへのしるしです。」
 このように天使は羊飼いたちに告げました。これを聞いて羊飼いたちはさらに驚いたことでしょう。自分たちが人々を代表して、救い主誕生の知らせを最初に告げ知らされたのですから。
 すると、天使の大群が加わり、
「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、みこころにかなう人にあれ」
と、神さまを賛美する大合唱が起こりました。天使たちが帰っていくと羊飼いたちは、こんな自分たちが救い主を本当に見つけられるかと思いながらも、この天使たちの賛美の声に力づけられるように、
「さあ、ベツレヘムへ行こう!神さまが知らせてくださったその出来事を見ようではないか」
と言ってベツレヘムへ向かいました。
 神さまに導かれて、羊飼いたちはヨセフとマリア、そして飼葉桶で寝ている赤ちゃんイエスさまを探し当て、拝んだのでした。羊飼いたちは天使が自分たちに告げた話を人々に伝えました。その話を聞いた人々は不思議に思ったそうです。しかし羊飼いたちは自分たちが見たこと聞いたことがすべて、天使の告げられた通りだったので大喜びして、神さまを賛美しながら自分たちの暮らす場所へと帰って行ったのでした。

 わたしたちが生きている今の世の中は、いろんな国々で戦争が起こり、小さな子どもたちがケガをしたり命を落としたりしています。またわたしたちの国を含め、世界中で自然災害が次々と起こっています。この先、どうなってしまうのだろうかと不安に思っているわたしたちは、今日のお話の日々辛い生活を送る羊飼いたちと変わりないのではないかと思います。そんな弱く、悩むわたしたちにも神さまは救い主の誕生を知らせてくださいます。あなたがたのために救い主がお生まれになったと語られていることを、羊飼いたちのように心に素直に受け止めて、わたしたちも天使たちと羊飼いたちとの神さまを賛美する歌声に合わせたいと思います。