説教(2020年12月月報より)

 降誕節第2主日(12月6日)礼拝説教より
『分け隔てなさらない、ただ一人の神』  寺島 謙牧師
   新約聖書 使徒言行録 10章34~43節
 本日の聖書箇所の最初に、核心をついた言菓があります。「神は人を分け隔てなさらない。」これは,ユダヤ人の優越性が身についていた使途ベトロが,異邦人の百人隊長コルネリウス家に招き入れられた時に語った言葉です。ベトロはその前日,幻を見たのです。神は天から下された,あらゆる獣,地を這うもの,空の鳥を食べるように言われました。これらは,決して,汚れて食べられないものではなく,全て神が造り清めたものであると言われ,これを通して,神の御救いが全ての人に及ぶことを示されたのでした。異邦人も神の同じ救いの下にあるという,神の公平さを,ベトロは心から信じて,語りました。「どんな国の人でも,神を畏れて正しいことを行う人は、神に受け入れられるのです。」(35節)神に救われ得ない人は,一人もいないということです。
 私共も,この神の公平さを,ほんとうに信じているでしょうか。「あの人には,話しても無駄だろう。」「あんなひどい人には,救いはないだろう。」という思いを抱きがちではないでしょうか。ペトロは,コルネリウスの家で,主イエス・キリストについて語り始めます。「神は,聖霊と力によってこの方を油注がれた者となさいました。」「イエスは,悪魔に苦しめ-られている人たちをすべていやされたのですが,それは,神が御一緒だったからです。」悪魔(悪)とは,私共を神から引きはなそうとする力のことです。現在は,若者も年老いたものも,その多くが望みなく生きぎるを得ない状態です。この一人一人の許に,何等の差別なく,主は来て下さったのです。これこそが,クリスマスです。クリスマスに無関係な人は,この世に一人もいないのです。この喜びこそが主イエス・キリストの福音です。
 しかし,41節の言葉にも注意しなければなりません。「しかし、それは民会体に対してではなく,前もって神に選ばれた証人。」とあります。これは.「教会」を指していると思われます。教会,つまり,これに属する私共がまず,よき知らせを聞かされたのです。ベトロはこの知らせを,「民に喜べ伝え、力強く証するようにお命じになりました。」と語りました。私共も,全ての人にこれを告げ知らせるべきなのです。神は,全ての人を救おうとしておられます。広く知られた,主イエスの十字架上での言薬の中に,御自身の隣の十字架に架けられた犯罪人に語りかけられた言葉「あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる。」があります。死の間際に悔い改めた重罪人にも,救いが与えられたのです。主が共におられることが,全ての人々に伝えられるのは,神のみ旨であります。公平な神の愛が示されたのが.クリスマスです。備えを致しましょう。 (磯村滋宏)