「ヨセフ、マリアの夫」
マタイによる福音書1章16~25節
ヨセフさんはナザレ村の大工です。もうすぐマリアさんと結婚することになっていました。家族や村の人たちにも喜ばれて、二人は結婚式を心待ちにしていました。
ところが、ヨセフさんは婚約者であるマリアさんがおなかの中に赤ちゃんを身ごもっていることを知ったのでした。ヨセフさんは驚きました。ヨセフさんがお父さんではありません。マリアさんは天使ガブリエルから聖霊によって神の子を宿したと告げられたことを伝えますが、ヨセフさんはにわかに信じることはできませんでした。ヨセフさんはとても悩みました。家族にも村の人たちにも相談することはできませんでした。なぜなら、結婚する前に婚約者であるヨセフさんを裏切って、マリアさんが他の人の子どもを産むことが知れたら、マリアさんは律法に背いた罰で石打ちの刑で殺されてしまうからです。ヨセフさんは神さまを信じる人でした。そして優しい人で、マリアさんのことを責めることはしませんでした。マリアさんがお腹の赤ちゃんのお父さんと結婚できるように、自分はそっと身を引こうと決心したのでした。
さて、ヨセフさんがそのように考えていたときのことです。神さまは天使を通して夢の中でヨセフに語りかけられたのです。
「ダビデの子ヨセフ、おそれずマリアを妻として迎えなさい。マリアのお腹の赤ちゃんは聖霊によって宿ったのです。マリアは男の子を産みます。その名をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからです。」
天使は、おそれずにマリアさんと結婚しなさい、すべてこれは神さまのご計画なのです、聖霊によって宿った男の子をイエスと名付けなさい、と命じられたのです。イエスという名前はユダヤではよく名付けられた名前でした。ヘブライ語では旧約聖書に出てくるヨシュアと同じ名前です。ギリシャ語ではイエスースとなります。その意味は「主は救い主」、つまり民を罪から救うからイエスと名付けなさい、と命じられたのです。
目が覚めたヨセフさんは神さまがおっしゃった通り、マリアさんを迎え入れることを決心しました。神さまの言葉を信じて、神さまにすべてゆだねることにしたのです。ヨセフさんの困った状況はなにも変わっていません。しかし人間の知恵では解決できない困った状況のただ中に、神さまが共にいてくださること「インマヌエル」を信じる信仰がヨセフさんに与えられました。そしてヨセフさんはマリアさんと結婚して、生まれる子のお父さんとなるという、神さまから与えられた重要な使命を果たす者へと導かれたのでした。その後、ヨセフさんは予定通り、マリアさんと結婚しました。ヨセフさんに見守られてマリアさんは安心してイエスさまを産むことができました。
こうしてイエスさまはわたしたちにも、神さまがどんなときも共にいてくださる「インマヌエル」を教えるために、この世に降ってきてくださいました。この恵みを覚えてクリスマスを待ち望む日々を過ごしたいと思います。