主イエスの十字架

聖書 ルカによる福音書22章39〜47節

 4つの福音書の中で、イエスさまの十字架上での言葉は、7か所出てきます。

 マタイによる福音書27章46節とマルコによる福音書15章34節には、「エリ(エロイ)、エリ(エロイ)、レマ、サバクタニ。(わが神、わが神、なぜたわたしをお見捨てになったのですか。)」、そして、ルカによる福音書23章34節には、「父よ、彼らをお赦し下さい。自分が何をしているのか知らないのです。」同43節では、「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる。」、そして同46節では、「父よ、わたしの霊を御手にゆだねます。」と書かれています。ヨハネによる福音書では、19章28節に、「渇く」と、同30節には「成し遂げられた」とあります。

 若いころに復活のイエスさまに出会い、すばらしいキリスト教の書物を残したパスカルは、「人間は弱い葦に過ぎない。しかし、考える葦である。」という有名な言葉を残しましたが、キリスト教への信仰を記した書物があります。そこには、「イエスさまと一緒に十字架にいた一人は、突然改心し、「わたしを思い出してください。」と言った。ただちにイエスさまは、「今日あなたは私と一緒に楽園にいる。」と言われた」とあります。突然であり、ただちにあるのが、ここでの信仰の姿です。ある信徒の肉親の方が、亡くなられる直前に「洗礼を受けたい」と言われました。ご自宅で洗礼を受け、二日後に亡くなられたその方は、信仰の告白こそできませんでした。しかし、この場面の十字架上にいた一人と同じように「わたしを思い出してください。」と言っているように感じます。「今日あなたはわたしと一緒に楽園にいる」とイエスさまから言われた、そのようにわたしは信じています。

 また、ヨハネによる福音書には、イエスさまが十字架上で、「渇く」と言われました。ルカによる福音書では、「わたしの霊を御手にゆだねます」と言われています。イエスさまは、ご自分の意志によって死を選ばれたのではないでしょうか。旧約聖書に記されていた全てのことが成就されるのを待ち(「成し遂げられた(ヨハネによる福音書)」)、最後の力を振り絞って大声て「父よ、わたしの霊を御手にゆだねます」と叫ばれて息を引き取られました。この場面に居合わせた百人隊長は、この出来事を見て、「本当に、この人は正しい人だった。」と言って、神を賛美したと聖書に書かれています。この百人隊長のような信仰をわたしたちも表し続けていきたいと思います。