ペトロ、主イエスを知らないと言う

 みなさんは、にわとりが実際に鳴くのを聞いたことがありますか。にわとりは、朝といってもまだ真っ暗な午前3時から4時ころに鳴くということを研究した人がいます。群れの中で一番えらいオスのにわとりが始めに鳴くのだそうです。そして、次に力の強いにわとりが二番目に鳴く。体内時計により、日の昇る1~2時間前にどうも鳴くようです。

 ところで、十二弟子の中の代表格であるペトロは、イエスさまとこんな話をしていました。イエスさまが、「みんなわたしにつまずく。」と話された時に、「わたしは、決してつまずきません。」と自信たっぷりに言ったのです。その言葉に、イエスさまは、「今夜にわとりが2度鳴く前にあなたは、三度わたしのことは知らないというだろう。」そのようにおっしゃいました。その時、ペテロは、きっとむっとした表情をしていたに違いありません。

 イエスさまは、その日の夜、ユダの裏切りによってつかまり、連れて行かれます。その後を付けていったペトロは、兵士や下役たちの中に紛れ込んで、イエスさまのそばにいました。ところが、そこにいた女中に言われました。「あなたも、あのナザレのイエスと一緒にいた。」ペトロは、「何のことを言っているか分からない。見当もつかない。」と言って、否定しました。その時、にわとりが鳴いたというのです。女中は、今度は周りの人たちに、「この人は、あの人たちの仲間です。」と再度言いました。この時も、ペトロは、打ち消しました。今度は、居合わせた人たちが、「確かにお前は、あの連中の仲間だ。ガリラヤの者だから。」と言い出したのです。ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら、「あなた方が言っているそんな人は知らない。」と誓ったというのです。その時でした。にわとりが再び鳴いたのです。

 ペトロはその時、「にわとりが二度鳴く前にあなたは、三度わたしを知らないというだろう。」と言われたイエスさまの言葉を思い出しました。そして、イエスさまのその時の顔を心の内に見たことでしょう。外に出て激しく泣いたと聖書には書かれています。ペトロは、挫折を通して、イエスさまの真実の愛を知ります。そして、ペトロは、復活されたイエスさまから、「わたしの羊を飼いなさい。」と言われ、その通り、強い者へと生まれ変わり、福音を伝え広めるために、命を懸けて歩み続けるのです。

 私たちも実はペトロと同じように、イエスさまのことを何度も知らないと言ってしまう弱い者たちです。しかし、イエスさまは、そんな私たちを何度も赦してくださいます。そして、神さまの御用のために用いようとしてくださっているのです。